感染症から身を守るための​基礎知識 第4回 感度と特異度、再生産数、クラスター

OUTLINE

感染症の流行をおさえるために様々な対策が取られます。そのためには検査の活用や流行の程度を表す指標、流行している場所の特定が必要です。ニュースにも出てくるこうした言葉を知っておきましょう

感染がある人を見つけるのが「感度」、感染がない人を見つけるのが「特異度」

感染症の検査の性能を表す言葉に感度、特異度という言葉があります。感染がある人を見つける精度が「感度」、感染がない人を見つける精度が「特異度」です。

感染がある人を見つけられない場合は、間違えて「感染がない」と判定してしまいます。これを偽陰性(間違って(偽)、感染がない(陰性)としてしまう、という意味)と呼びます。感染がない人を間違えて「感染がある」と判定してしまうことを偽陽性と呼びます。感度も特異度も100%正確であってほしいのですが、残念ながらそんな完璧な検査はありません

何人にうつすのか、それが問題だ:再生産数

感染した人が感染が治るまでに何人にうつすのかを「再生産数」と言います。その病原体の感染力の指標になります。この数字が1を超えていれば感染は拡大、1未満であれば感染は広がらないとわかります。再生産数を計算するには、感染者が他の人にうつす力を持っている期間、感染者と感染していない人の接触の度合い、感染していない人がどの程度免疫力(体の抵抗力)があるかなどが関わってきます。

新しい病原体で誰も免疫(抵抗力)を持っていない場合には「基本再生産数」、免疫を持っているかもしれない場合には「実効再生産数」という言葉を使います。

新型コロナウイルスの実効再生産数は国立感染症研究所等から発表されており、コロナウイルスの第3波と言われる2020年12月の段階では、全国的に1を超える水準が続いています*1。

クラスターとは感染が広がった集団のこと

新型コロナウイルス感染症が集団で発生した場合、この集団をクラスターと呼びます。日本で感染が確認され始めたころ、感染症だとわかった人の行動をたどってクラスター(当時は5人程度以上の集団*2)を確認し、そこで感染した人や濃厚接触者を管理することで封じ込めを狙ったのです。感染症の拡大し始めたタイミングではこうしたやり方が有効だと考えられています。「三密」は、クラスター発生の原因の一つであることがわかり、これを避けることでクラスター発生を防ごうとしています。

ただし、クラスターが特定できない感染者が増えてくると、クラスター調査、管理だけでは感染の拡大に対応しきれないという面もあります。

 

参考文献: