コロナウイルスの検査、受けるべき? 第3回 ​結果が出たら、結果の信憑性

OUTLINE

新型コロナウイルスに関わる色々な検査の名前を耳にするようになりました。検査結果の正しい意味について、陽性・陰性だった場合の対応について説明します。

検査結果が出たんだけど、どういう意味なの?

PCR検査や抗原検査のように、感染しているのかどうかを調べる検査を受けると陽性または陰性という結果が出ます。陽性という検査結果の意味は、検査でウイルスの破片(PCR検査では遺伝子、抗原検査ではタンパク質)が見つかった、つまり検査した時にウイルスが体の中にいたようだという意味です。陰性では逆に、検査した時にはウイルスが体の中にいなかったようだという意味です。

どちらも「ようだ」とまでしか言えないのが、これらの検査の限界でもあります。検査の性能次第では、本当はウイルスの破片でないものを間違って破片だとしてしまったり(間違って、感染があるとしてしまう)、検査でわかるほど十分には(まだ)ウイルスが増えていないタイミングで検査をすると見逃すことがある(間違って、感染がないとしてしまう)からです。このため、感染症の診断には検査結果だけでなく、次のような要素も考慮します*1。

  • 感染者と接触があったのか
  • 検査の時点で感染症の症状があったのか
  • その後の症状の変化はどのようなものか

検査結果って、どの程度信じていいの?(PCR検査)

もし自分でPCR検査を受けたとして、検査結果しかわからない場合には結果がどの程度信頼できるものかを考えます。たとえば、陽性という検査結果だった場合に本当に感染している確率を考えるということです。この確率を「陽性的中率」と呼びます。陽性的中率は、その検査の性能(感度や特異度)と、その感染の流行度合(有病率)から計算します(陽性率、陽性一致率、陽性尤度比など、似た名前の違う数値もあるので注意しましょう)。

陽性的中率は、検査を受ける人によって値が変わります。仮にPCR検査の性能が感度70%、特異度99.9%だとします。そして、新型コロナウイルスに今感染している人が日本で1000人に1人いる(全国で12万人が今感染していると仮定)とします。その場合、陽性的中率は40%程度です。つまり、検査結果が陽性となった人の4割しか実際に感染していないことになります。

ところが、同じ性能の検査を受けたとしても、もしあなたが症状も感染者との濃厚接触歴もまったくない場合には、陽性的中率が変わります。あなたのような集団の有病率はもっと低いと考えられるからです。仮に、無症状で濃厚接触歴もない集団の有病率が10万人に1人だとすると、陽性的中率は0.7%程度。検査結果が陽性となった人のなかで本当の感染者は100人に1人もいないことになります。

逆に、新型コロナウイルスのPCR検査で陰性であった場合、もし検査結果しかなければ、検査した時にはウイルスが体の中にいなかったようだと確からしく言えます。これは、この検査の陰性的中率(検査結果が陰性だった場合に本当に感染していない確率)が検査を受ける人によらず高いことがわかっているからです。とはいえ、検査をした時点では、検査でわかるほど十分には(まだ)ウイルスが増えていなかった可能性があります。そして、もちろん検査した日よりも後になって感染する場合があることを忘れてはいけません。このため、仮にPCR検査の「陰性証明書」をもらっても、今感染していないことの証明にはならないことも知っておきましょう。

※少し難しいですが、検査の性能を表す「感度」は感染がある人を見つける精度、「特異度」は感染がない人を見つける精度です。「有病率」は、ある時点での、その集団における感染者の割合(治った人は除く)です。有病率は、どのタイミングの、どんな集団を考えるかによって数字が変わるところがポイントです。

で、検査結果が出たらどうすればいいの?

医師がいる場合には、症状などから診断して、その後の対応策を教えてくれます。医師がいない状況で検査を受けた場合には、次のようになります。

<結果が陽性の場合*2>

  • 保健所から電話連絡が来ます。対応策など大事な連絡ですので必ず取るようにしましょう
  • 入院しての治療が基本ですが、無症状や軽症の場合には、地域によっては自宅や施設での療養となります
  • 発症者の80%は発症から1週間程度で回復します*3
  • 入院、療養のいずれの場合も、感染を拡大させないように自分(無症状であっても)と濃厚接触をした可能性がある方々の調査が始まります

仮に症状がなくても検査をした日の2日前から感染させる力があるとされています。また、発熱等の症状が出てから7日~10日程度経つと感染させる力は低下し、その後はPCR検査で検出される場合でも感染させる力は極めて低いこともわかっています*4。このため、タクシーなどの乗り物の記録、飲食店や宿泊など滞在、訪問の記録などを残しておくと有用です。

<結果が陰性の場合>

  • 自分が濃厚接触者となっている場合には、感染した方と接触した後14日間は不要不急の外出や公共交通機関の利用を控えるなどしてください。また、濃厚接触者である可能性を保健所に伝え、指示に従いましょう*5
  • 自分が濃厚接触者ではなく、症状もない場合には、検査した時点ではおそらく感染していなかったと考えられますが、引き続き感染防止策(手洗い、咳エチケット、マスク、消毒、距離を保つなど)を徹底しましょう*6