ワクチンの大規模接種でどうなる?

OUTLINE

日本でも始まった、新型コロナワクチンの接種。大規模かつ迅速な接種に向けて取り組みが進んでいます。大規模なワクチン接種によってどんなことが起きるのでしょうか。

新型コロナワクチンの接種が始まりました

ワクチンは、感染症やその重症化の予防に使う医薬品です。ワクチンは子供から大人まで広く使われ、世界では毎年250万人以上もの子供の命を感染症から救っているとされています※1。ワクチンに期待する効果には、以下のようなものがあります※2。

・感染しなくなる(感染の予防)
・感染しても発症しなくなる(感染症の予防)
・発症しても重症化しなくなる(重症化の予防)
・接種していない人でも感染しにくくなる(集団免疫の獲得)

今回、新型コロナワクチンは16歳以上の国民を対象に、2021年2月17日から2022年2月28日までの期間に接種をするように取り組みが進んでいます。接種は義務ではありませんが、受けるように努力する義務があります。妊婦さんや特定の病気を持つ方の場合には、努力義務の対象でなかったり、接種できなかったりする場合があります。

ワクチンの接種は無料で、お住まいの市町村で実施されます。まず医療従事者を対象に、一部の医療機関で2月中旬から開始(先行接種)されます。次に、一般の医療従事者への接種が3月から開始(優先接種)になる予定です。その次は、高齢者への接種で4月以降になる見込みです※3。

大規模な接種が進むと起きること

ワクチンの接種者が増えていくと、まず二つのことが起きます(図2のステージ2)※1。

ワクチンの効果で感染者数が減る
接種者が増えるため有害事象も増える
ワクチン接種に伴って予期しない反応や好ましくない反応が体に起きることを「有害事象」と呼びます。残念ながら、今の技術では有害事象を完全になくすことはできません。


WHO 「VACCINE SAFETY IN IMMUNIZATION PROGRAMMES」をもとにHealth Amulet編集部作成

ワクチンの効果である「感染者数の減少」を実感しだすタイミングで、有害事象への関心も高まることが知られています。この時期には、マスメディアやSNSで有害事象の事例が取り上げられやすくなります。その結果、次のようなことが起きてくる可能性があります(図2のステージ3)。

有害事象の事例が取り上げられやすくなる
ワクチンへの信頼が損なわれる(不安が高まる)
ワクチンの接種ペースが下がる
感染症が再び増える

こうしたことが起きた場合でも、その後に感染症が再び増え始めたり、新しいワクチンが開発されたりするとワクチン接種が再度増え始め、感染者数は再び減少を始めるとされています(図2のステージ4)。

信頼できる情報で武装しよう

ワクチンによって感染症への不安が減るにつれ、逆に多くの人の関心がワクチンの有害事象に向いていくのは仕方がないことかもしれません。場合によっては、ワクチンへの不安が強くなりすぎてしまうこともあります。過度の不安から自分を守るには、こうしたことが起きうることを事前に知っておくことが大切です。

研究機関や政府は、一次的な過度の不安によってワクチン接種が遅くなってしまわないように取り組んでいます。また、ワクチンの安全性の監視も当然続けています。たとえば、有害事象の発生の監視やそれらへの対処に取り組んでいます。また、ワクチン接種の前にきちんとワクチンのメリット・デメリットを伝えたり、有害事象の原因がワクチンそのもの(この場合の有害事象を「副反応」と呼びます)であるかどうかを科学的に評価したりすることにも取り組んでいます。

ワクチンに高い効果が期待される一方、新しいワクチンであることから不安も少なくないなかでの接種開始です。うわさ話しに不安ばかりがあおられてしまうことのないように、できるだけ正確な基本情報を今から身につけておきましょう。そして、もしワクチン接種後に体調の変化などで「あれ?」と感じたら、すぐに接種した医療機関に相談しましょう。

参考:信頼できる情報源へのリンク集

参考文献:

※1 WHO 「E-learning course on Vaccine Safety Basics」
※2 厚生労働省「ワクチンの有効性・安全性と副反応のとらえ方について」
※3 新型コロナウイルス感染症に係る予防接種の実施に係る手引き 第2.0版

※2021年2月現在の情報を参考に作成しています。

作成:Health Amulet編集部