ワクチンって効くの?怖いの? その1
ワクチンに期待する効果とは

OUTLINE

ワクチンに期待する効果は感染予防だけではありません。そして、この効果は科学的な方法で示されてから、みなさんの元に届くことになります。

ワクチンって、どのくらい効果あるの?

ワクチンとは、感染症やその重症化の予防に使う医薬品です。ワクチンは子供から大人まで広く使われ、世界では毎年250万人以上もの子供の命を感染症から救っているとされています※1。ワクチンに期待する効果には、以下のようなものがあります※2。

感染しなくなる(感染の予防)

感染しても発症しなくなる(感染症の予防)

発症しても重症化しなくなる(重症化の予防)

接種していない人でも感染しにくくなる(集団免疫の獲得)

ワクチンに期待する効果の一つは、ワクチンによって感染症にならないようになることです。これには、感染しても発症しないという効果も含みます。感染しなくなる効果は証明が難しいため、まずは発症しない効果を期待して確認するのです。
WHO 「E-learning course on Vaccine Safety Basics」を元にHealth Amulet編集部作成
感染症になりにくくなったかどうかは、ワクチンを接種した人たちと接種しなかった人たちに分けて、それぞれのグループでその感染症になった割合を比べて計算します。
たとえば、ワクチンを接種した人たちの100人に1人(1%)が感染症になり(何かの理由でワクチンによる予防ができなかった人たちです)、一方で接種しなかった人たちの100人に10人(10%)が感染症になったとします。この場合、この1%と10%を比べます。ワクチンを接種した人たちでは、感染症になる割合が10分の1になっています。これを、ワクチンのおかげで感染症が90%減ったと読みかえて「ワクチンの効果は90%」と表現します。
感染症になった人の割合以外に、重症化する人の割合や感染症で亡くなる人の割合も比べます。また、こうした効果が本当に免疫が鍛えられたおかげなのかも調べます。免疫が鍛えられたかどうかは、「抗体」という免疫が持つ武器の様子を調べて確認します。抗体のなかでも、病原体の感染力や毒性をなくすようなタイプの抗体を調べます。この抗体を「中和抗体」と呼びます。

ワクチンは自分を守るだけじゃない

ワクチンは、感染症になる前に免疫に「練習」をさせて抵抗力を鍛える道具です。免疫には記憶力があり、一度闘った相手のことを覚えてくれるからです。とすると、ワクチンを接種しなくても、一度感染してしまえば大丈夫じゃないの?と思われるかもしれません。でも、一度の感染で免疫が鍛えられるのか、免疫が闘い方をどのくらいの期間記憶しているのかは、個人によっても病原体によっても違います。また、感染症は周りの人にうつしてしまうことがあります。同じ感染症でも重症度は人によって違うため、自分は大丈夫だったのにうつしてしまった相手が重症化してしまうという心苦しい状況も起こりえます。
こうした理由などから、安全で、感染することなく抵抗力をつけられることが確認されたワクチンを接種するほうが良い予防策とされています。

でも、ワクチンって怖くないの?

病気の治療に使う薬と違い、ワクチンは感染症予防のために健康な人にも使います。このため、その安全性には薬より厳しい基準が使われています。それでも、ワクチン接種に伴って予期しない反応や好ましくない反応が体に起きる場合があります。これを「有害事象」と呼びます。有害事象の原因は、ワクチンのほかに、接種する人が持つ不安や、実はワクチンと無関係だと後になってからわかるものがあります。残念ながら、今の技術では有害事象を完全になくすことはできません。
よく見られる有害事象には、ワクチン接種後の発熱や倦怠感、接種した場所の痛みや腫れ、アレルギー反応などがあります。熱や痛み、腫れは数日で治ることがほとんどですが、「あれ?」と感じたらすぐに接種した医療機関に相談しましょう。