ワクチンって効くの?怖いの? その2
ワクチンの有害事象について

OUTLINE

ワクチンは重要な医薬品ですが、予期しない反応が出る場合があります。その原因やタイプを知ることで、自分の心身を守りましょう。

ワクチンは感染症予防のために健康な人にも使う道具

ワクチンとは、感染症やその重症化の予防に使う医薬品です。ワクチンは子供から大人まで広く使われ、世界では毎年250万人以上もの子供の命を感染症から救っているとされています※1。たとえば、日本でも過去に猛威を振るった天然痘という感染症は、ワクチンのおかげで世界から根絶されました。
病気の治療に使う薬と違い、ワクチンは感染症予防のために健康な人にも使います。このため、その安全性には薬より厳しい基準が使われています。それでも、ワクチン接種に伴って予期しない反応や好ましくない反応が体に起きる場合があります。これを「有害事象」と呼びます。残念ながら、今の技術では有害事象を完全になくすことはできません

ワクチンに関する(悪い)うわさは広がりやすい

ワクチンを短期間に、かつ大規模に接種する場合には、有害事象の話題を耳にすることが多くなります。年齢や持病、体調などがバラバラな大勢の人々にワクチンを一気に接種すると、様々な有害事象がいっぺんにたくさん起きたように見えてしまうからです。こうした場合には、不正確なうわさ話が広がりやすくなります。後でもお話しするように、正確な情報がわかるまでには一定の検証期間が必要です。その間にうわさ話しに不安ばかりがあおられてしまうことのないように、できるだけ正確な基本情報を今から身につけておきましょう。

有害事象には実はワクチンに無関係のものもある

国際的な保健機関であるWHOによれば、有害事象が起きる原因は次の5つに分類されています※1。このうち、ワクチンそのものが原因となった有害事象を「副反応」と呼びます

  1. ワクチンの成分に関連するもの
  2. ワクチンの品質が低いために起きるもの
  3. ワクチンの取り扱いミスによるもの
  4. ワクチンへの不安によって起きるもの
  5. ワクチンには直接関係なく偶然起きたもの

それぞれを見ていきましょう。

4)による有害事象では、主に不安が原因で接種の際や直後に気分が悪くなって吐いたり、失神してしまうことがあります。ワクチンへの不安は、事前にしっかりとワクチンについて知っておくことで予防できる可能性があります。このサイトで正しい情報を身につけて不安を減らしていただくことが大切です。

1)や2)は、ワクチンそのものが原因となった有害事象で「副反応」と呼ばれます。よく見られる、比較的軽い副反応には接種後の発熱や倦怠感、接種した場所の痛みや腫れなどがあります。経験したことのある方もいるのではないでしょうか。以前、「ワクチンは感染症予防のための『練習』です」とご説明しました。この練習が激しいと、こうした副反応の原因となることがあります。水分補給や解熱剤などで対処することがあります。

また、ワクチンによる反応でよく耳にするものとして、「アナフィラキシー」というものがあります。これは、アレルギー反応の一つです。重症または重篤な副反応となる場合がありますが非常にまれで、ワクチンのタイプによりますがおおまかに100万人に1~2人の頻度です※1、2。多くの場合は、接種後30分以内に息苦しさや皮膚の痒みが表れます。予防接種後30分は医療機関で様子を見たり、医療機関へすぐに移動可能な場所で待機したりしておくと安心です。ほとんどの場合は適切に処置をすれば治療が可能で、国内ではワクチンによるアナフィラキシーで亡くなったという報告はありません(※2)。

アナフィラキシーは、ワクチンの成分などにアレルギーをお持ちの方で注意が必要です。また、食べ物アレルギー、特に鶏卵アレルギーのある方で注意が必要だと言われることもありますが、これまでにワクチンでアレルギー反応を起こしたことがある方でなければ実際には危険性は低いと考えられています※3。心配な方は事前に医師に確認しましょう。

3)の有害事象は、ワクチンの製造や保存、輸送、接種の際のミスによるものです。たとえば、ワクチンが製造される途中、製造されてから医療機関に届くまで、医療機関に届いてから接種するまでのどこかでミスがあった場合に、このタイプの有害事象が起きる可能性があります。ワクチンを接種したら、いつ、どの医療機関で、どのワクチン(製造(ロット)番号)を接種したかを記録しておきましょう。将来的に自分を守ってくれる大切な情報です。

5)の有害事象は、ワクチンやその接種とは無関係なものです。ただ、無関係であることの証明は簡単ではなく時間がかかります。証明には、ワクチンを受けたグループとそうでないグループで同じ反応が起きる程度を比べる必要があるのです。たとえば、ワクチンを接種した翌日に不幸にも亡くなった方がいたとして、それがワクチンのせいなのか、ワクチンと無関係であるのかがわかるまでに時間がかかるのです。このため、(結果的に)不安をあおるようなニュースが続いてしまう場合があって厄介です。

WHO 「E-learning course on Vaccine Safety Basics」を元にHealth Amulet編集部作成

参考文献:

※1 WHO 「E-learning course on Vaccine Safety Basics」
※2 国立国際医療研究センター 「事故防止のための環境整備・スタッフ教育」
※3 東京都医師会 「予防接種とは?」

※2021年1月現在の情報を参考に作成しています。

作成:Health Amulet編集部